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令和2年度 ロコモティブシンドローム予防教室

コロナに勝つ!ロコモに勝つ!
令和2年度 ロコモティブシンドローム予防教室
「ロコモティブシンドローム(1)」
講師 大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻
看護実践開発科学講座
教授 竹屋 泰 氏
<スライド> 笑って楽しく循環器予防~今だから伝えたい笑いの力~
皆さんこんにちは大阪大学老年看護学の竹屋泰と申します。
本日は、ロコモティブシンドロームについてお話させていただきます。
このシリーズは3回に分けてお話させていただきます。
今回は第1回目として、ロコモティブシンドローム1。
内容は、まずはロコモティブシンドロームのお話を聞いていただく前に、高齢者、或いは加齢、歳を重ねるということがどういうことか、最近どういった考えが用いられているかについてお話させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
<スライド> 高齢者をイメージする 加齢に伴う変化
まずは高齢者をイメージするということで、我々必ず高齢者になるわけですけれども、加齢に伴う変化について少しお話させていただきます。
<スライド> 加齢に伴う身体機能の変化
これは古いデータですが、労働災害の研究から用いられているデータです。
20代前半に比べて、まだまだ若い50代後半の加齢に伴う身体機能の変化を示したものです。
ブルーで示されているのが20代前半。それに比べて、赤の50代後半になると、このくらい身体機能が低下してくるということです。
具体的には、視力聴力などの感覚機能、バランス能力というのは感覚機能の一部ですが、こういったものは非常に早期に、40代後半から50代ぐらいに低下し始めます。
筋力の低下も、それに遅れて、低下してきますけれども、身体の足腰から始まって、上に広がっていくということがわかっています。
<スライド> 加齢に伴う身体機能の変化 視力
例えば視力を見てみますと、遠近調節力です。これは40代後半ぐらいからもう見にくくなってくる、スマホなんかが見にくくなってくるというようなことがわかります。
またコントラストの低いもの、色の違いを識別する力も弱まってきます。
こういった明暗順応といいますが、明るいところから急に暗い場所にという変化に対する反応が弱くなってきます。
こういうものが、加齢に伴って大きく低下してくるということです。
<スライド> こんなふうに見えていませんか? 白内障
皆さん白内障というのはご存知だと思いますが、白内障というのは視界にもやがかかってかすんで見るだけではないです。物がぼやけて二重三重に見えるというのも、白内障の重要な症状です。
こういったような状態は見にくいだけではなくて、転倒それから骨折などのリスクになるわけです。実際に転倒や骨折は増えますし、白内障手術でそれが改善するということもわかっています。
<スライド> こんなふうに見えていませんか? 明順応の低下
白内障ではなくても、自然にこういった明順応の低下が起こってきます。具体的に言いますとハローとかクレアという現象が起こります。
これは(左の写真)は若い人です。高齢者といっても40代後半ぐらいから、このように(右の写真)見え始めます。光の周りに輪っかが見えて、或いはギラギラしてまぶしく見える。こういった現象は実は明順応の低下ということで説明できます。
こういうことがあると見にくくて、見逃してしまう、車の事故も増えるということも理解できます。
<スライド> 視力低下は高齢者の大きなリスク
さらにそういうことが進むと、これは(左端の写真)、少し引きの絵ですが、こうなると階段だということがわかります。でも少しアップにしてみますと(真中の写真)、こういうところをヒントに、これ実は階段です。
でも、もっと引きの絵で近くだけを見ると、階段ということがなかなかわからないです。
まさに高齢者がそう見えているということで、このような環境整備ということも、高齢者を見る上では大切だということになります。
<スライド> 加齢に伴う身体機能の変化 聴力
例えば協力で言いますと、普通の会話は結構聞こえます。
普段話していて聞こえているなと思っても、少し雑音のあるところでは非常に聞きづらくなります。言葉を選択して聞くということが難しくなってきますので、普段聞こえても少し騒がしいところでは聞こえないということが起こってきます。
我々はそういうことが起こってくるということを理解する必要があります。
<スライド> 加齢に伴う身体機能の変化 握力
握力などは20代がピークでゆっくり落ちてきます。
<スライド> 加齢に伴う身体機能の変化 脚力
脚力もやはり20代がピークで、これは握力に比べてもっと早いスピードで低下してくるということがわかっています。
<スライド> 加齢に伴う身体機能の変化 記憶力
記憶力は40代ぐらいから下がってきます。例えば40代ぐらいになりますと、人の名前がうっかり出てこない、芸能人の名前がうっかり出てこないとか、いつも使っている4桁の暗証番号がうっかり出てこない、そういうことが起こってくるのも、こういうわけです。
<スライド> 加齢に伴う身体機能の変化 個人差の拡大
一方で、低下してくるばかりではなく、極めて高齢者では身体機能の変化、個人差が拡大してくるということがわかっています。だんだん年とともに、個人差の拡大が広がっていきます。個人差が広がっていきます。
20歳ぐらいではみんな元気なわけです。ただ65歳で見てみると、実際の暦年齢に比べて、若い人もいれば、それよりも年をとっている人もいて、その差のばらつきは、大体16歳のばらつきがあったということが報告されています。
だんだん年をとるとともに、今までの生活、ライフスタイルといった影響で、若い人もいれば、見た目、暦年齢以上に年をとる人もいるということもわかっています。
<スライド> 加齢は治せる?
そのばらつきの中で少しでも若くいたいと思います。そこで年をとることは治せないかと考えるわけですが、老年医学の世界は治せるというふうに考えます。
実際、修正可能な要因が老化を決定するということが、世界中の研究者、老年医学の研究者の間で、もうコンセンサスを得られています。
実際に寿命に影響する要因を、遺伝的に、生まれながらに決まっているのはたった25%で、実は寿命は、生まれてからどんな環境、どんな暮らしをするかということで75%が決められているということがわかっています。
具体的には食料、身体活動(運動)、健康的な行動、例えばたばこを吸わない、飲みすぎないとかです。経済状況、医学の発展も影響してきます。
このような生まれてからのこと、環境的な要因で寿命を変えられるということがわかってきています。
<スライド> 最新の報告から 認知症は減っている?
認知症の研究などでもそういうことが言われています。
最近の報告を少しお話させていただきたいと思います。
<スライド> 認知症の方が増加しています
認知症の方が増加しているというのは聞いたことあると思います。実際に2050年に1億人を超えます。
日本では予備軍を含めると、現在900万人近くの高齢者が何らかの認識機能障害を有することがわかっています。
認知症の方は増加しているわけです。
<スライド> 認知症の方が減少しています
一方で、認知症の方は減少しています。これも真実です。
どういうことかと言うと、認知症が増え続けているだけではありません。最近、認知症患者の爆発的な増加に対する懸念を緩和する研究結果が報告されています。
その先駆けとなった研究は、2016年アメリカで発表された認知症の有病率が、減少しているというものでした。
同じ時期に、イギリスやスペインなど、ヨーロッパ各国で同様の報告が相次ぎました。
<スライド> 有病率って何でしょう?
有病率とは何でしょうか。
説明させていただきますが、Aという村は人口が20人の村です。20人のうち2人が認知症でした。そうすると、Aという村の認知症の有病率は20分の2で10%ということになります。一方で、Bという村は、人口が40名の村です。認知症の方は3人おられました。そうすると40分の3で、認知症の有病率は7.5%ということになります。
Aという村とBという村を比べてみると、Bという村は、認知症は1人増えていますが、有病率は2.5%減っているということになります。先ほどの、認知症が増えている、そして認知症の有病率が減っているというのは、こういうことです。
高齢者が増えたので認知症の数としては増えたが、認知症のある割合は減ってきたということが報告されました。
<スライド> 認知症有病率が低下しています
最初の報告を見ると、2000年と2012年で、2000年の時は65歳以上の人の11%が認知症だったのが、2012年には8.8%と有病率が減っているという報告がされました。
さらにこの報告した先生は、ではなぜ減ったのかということを考えたわけです。
減った理由がわかれば、認知症の治療になるのではないかということを考えたわけです。
<スライド> 生涯にわたる認知症の危険因子
どのようなことを考えたかというと、面白い報告ですが、認知症の人が100人いたとすると、そのうち、例えば7人は生まれながらの認知症になりやすい遺伝子を持っているから、100人の認知症のうち、それが原因で7人が認知症になってしまったという報告です。
100人認知症の人がいたら8人は小さい時に、あまり教育を受けなかったから認知症になったということです。100人認知症の人がいたら、中年期に高血圧などを放っていたから2人が認知症になってしまうということです。
年をとってから、たばこをやめなかったから、100人のうち5人が認知症になった。たばこ止めれば、そのうち5人は認知症にならずに済んだということです。
この先生は、おそらくこの10年間で世界中で禁煙が進んだ。だんだん世界が豊かになって、教育期間が短い人は少なくなった。小児期のうちは教育をしっかり受けるようになった。高血圧の治療が良くなった。糖尿病の治療など医学の進歩が良くなった。そういったことが進歩して、認知症の有病率が減ったのではないかというように考えました。私もそうのように考えます。
その後、また驚く報告がされました。
<スライド> 発症率低下の原因は不明です
アメリカからこのような報告がされました。
アメリカのある村では、1970年代から認知症の調査をしていた。そういう村があります。そうすると60歳以上で、認知症がない人を調べると、1970年代は、5年以内に3.6人が認知症になっていきました。
80年代は5年以内に2.8人が認知症になっていきました。そして2,2人、2人というふうに、10年ごとに認知症になる率がどんどん減ってきました。
これも先ほどの報告と同じです。
では、何が違うのか。
認知症の有病率、発症率ということになりますが、認知症になる人が減ってきたという報告です。
ただ、この報告では、認知症の他にも、糖尿病とか、たばこを吸うとか、お酒を飲みすぎているとか、どんな教育を受けているかということも調べられています。
そういった項目を、認知症の発症と加味しても、高血圧や糖尿病とか、教育期間が短かったとかを考慮して加味しても、実は認知症発症率の低下の原因を説明できなかったというふうに報告しました。
糖尿病の治療が良くなったから、高血圧の治療が良くなったから、教育が良くなったからと考えたけど、そういったことを加味しても、これだけ減っている理由を説明できないと発表しました。
そうなると、なぜ有病率が減ったのかというのは、結局原因不明ということになってしまいました。
<スライド> 生涯にわたる認知症の危険因子
この図に戻ってみると、100人認知症になった時に、こういった原因があったから認知症になったと言いましたが、それを全部足しても44人です。
もともと56人は原因不明だったわけです。この56人というのは、我々人類がまだ知らない未知の認知症の原因があるのかもしれませんが、認知症の原因として最大のものは加齢と言われています。
つまり認知症というのは年をとればなっていく。100歳になれば半分ぐらいの人が認知症。年をとっていくことが、認知症の最大の原因だと考えられています。
認知症には未知の原因があったから、それがきっと良くなったから認知は減ったと考えたわけですが、この加齢自体が良くなっているのではないか、現在、加齢しにくい体になっているのではないかと、老年医学では考えます。
<スライド> 加齢は治せる?若返る高齢者
加齢自体が良くなっているということです。
<スライド> 高齢者は若返っています
実際に高齢者は若返っています。加齢自体が良くなっているということです。
厚生労働省では、日本国民の体力というのを定期的に測定しています。
黄色と赤で10年の差があります。歩行速度、或いは握力などを測定しています。
年齢によって体力を示しているわけですが、歩行速度或いは握力をとってみても、この10年間で、大体10歳ぐらい若返っています。
すなわち、10年前の65歳のスピードで、現在の75歳は歩きます。
10年前の65歳の握力を、現在の75歳は出すわけです。
高齢者は若返っているということです。
<スライド> 磯野浪平さん
昭和20年代の漫画サザエさんですが、昭和20年代というと、まだ日本人の平均寿命が50歳代の頃です。その時に書かれた漫画ですが、これは磯野浪平さんです。一体何歳だと思いますか。年齢はちゃんと出ていますが、54歳です。今の54歳と比べると、たいそう老けて見えます。例えば現在の54歳と言うと、元木雅弘さん(モックン)とかが54歳だそうです。
磯野浪平さんと比べると、明らかにモックンは若く見えます。見た目一つとっても高齢者は若返っているというのは、ご理解いただけると思います。
<スライド> 健康寿命と平均寿命の推移
実際に寿命が伸びています。男性も女性も伸びていて、女性は現在88歳を超えています。健康寿命も伸びています。健康寿命が伸びていて、伸び率もだんだん差が縮まってきています。それでもまだ男性で8年以上、女性で13年ぐらいあります。
この差というのは、何らかの支援や介護を受けなければいけない13年或いは8年ということになるわけです。
ここをいかに短くするか。それがやっぱり重要なわけです。
いつまでも元気で自分の足で歩いて自由に健康で生きたいというのが我々の願いです。
では、こういったことになる原因は何でしょう。
<スライド> 高齢者における要介護の原因
厚生労働省から多く出ており、要介護、要支援になった原因、健康寿命を短くする要因というのは、膝が悪いとか、腰が痛いとか運動器の疾患であるということがわかっています。
それから、100歳になれば衰弱もあるでしょうし、血管病や認知症ということがあるわけです。
この最大の原因である運動器疾患、それに関連する障害を、ロコモティブシンドロームといいます。
<スライド> ロコモを知ろう!ロコモティブシンドローム
これは第2回でお話させていただきますので、ぜひお聞きください。
ただ、ロコモティブシンドロームは運動器の異常を表す言葉でありますけども、決して高齢者だけの問題ではありません。
<スライド> 体力・運動能力調査
高齢者のロコモティブシンドロームは圧倒的に多いわけですが、実は高齢者の運動能力というのは伸びています。そして運動習慣というのも非常に高いです。
現在問題になっているのは、この40歳前後の、特に女性です。子育て世代、この世代の運動能力或いは運動習慣というのは非常に低くなっています。
<スライド> 中年世代の運動離れは深刻
このデータで、40歳代の女性の運動習慣というのが最も低いです。
70歳代の女性の7割が週1回以上の運動、スポーツをしています。
40歳代の女性はもっと低く、男性女性ともこの世代の運動能力の低下が非常に深刻な問題になっています。
ぜひともこの世代の方たちも、ロコモティブシンドロームについて知っていただきたいと思っています。
第1回はこれで終了いたします。ご聴講どうもありがとうございました。